聞くことを忘れた大人たちへ――“わからない”が許されなかった時代に。

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あの頃は、なんでも聞けた

「ねえパパ、磁石ってなにでできてるの?」
「電子レンジって、なんで中のごはんが温かくなるの?」
「どうして空は青いの?」

最近、6歳になる息子の“質問攻め”が止まりません。

散歩中も、お風呂の中でも、寝る前のひとときも、「どうして?」「なにで?」「なんでそうなるの?」の連発。少し前は「月はどうしてついてくるの?」と真顔で聞かれて、思わず笑ってしまいました。

でも、そのたびに、私は答えに詰まります。正確に説明できることのほうが少ないからです。

最初は微笑ましく思っていました。けれど、あるときふと気づいたんです。
——あれ、昔の自分も、こんなふうだったな。

私も小さい頃、「これなに?」「どうして?」が口ぐせでした。
母が料理をしていれば「なに作ってるの?」、父が新聞を読んでいれば「どんなこと書いてあるの?」と、何でもかんでも知りたくて仕方なかった。

知らないことがあるのは、当たり前で、楽しいこと。
誰かに尋ねれば、世界がまたひとつ広がっていく。
そんな感覚が、あの頃の毎日には確かにあったのです。

今の息子の姿に、自分の原点を重ねるたび、
「いつから自分は、こんなに“聞けない大人”になってしまったのだろう」と考え込んでしまうのです。

いつからか「聞けなくなった自分」

社会人になったばかりの頃——
今のようにスマートフォンもなく、ネット検索も特別なスキルのように扱われていた時代。

「その場で聞くしかない」が当たり前でした。
でも、実際にはその“当たり前”が、とても難しかったのです。

会議では、上司や先輩が当たり前のように業界用語や略語を使いながら進めていく。
私はというと、理解できない言葉に出くわしても、手を挙げて「それはどういう意味ですか?」なんて、とても聞けませんでした。

なぜか。

聞ける雰囲気がなかったのです。

「そんなことも知らないの?」
「今さらそんな基本を?」
そんな空気が、部屋中に漂っていた。
いや、誰も何も言っていなくても、自分の中で勝手に圧を感じていたのかもしれません。

それに加えて、当時は“パワハラ”なんて言葉すらなかった時代。
上司の言うことは絶対。理不尽でも、黙って従うのが当然でした。
「聞く=逆らう」と受け取られるような空気も確かに存在していたのです。

結果として私は、わからないことをそのままにし、
曖昧なまま進めてしまう——そんな働き方を覚えていきました。

なぜ大人は聞けなくなるのか?

「聞かないほうが身のため」——
そんな風に、私たちはいつしか学んでしまいます。

これは、個人の性格の問題ではありません。
「黙って従うことが賢い」とされてきた時代背景や、
「わからない」と言うことを“恥”とする空気が、そうさせたのです。

自分の評価を下げたくない。
空気を壊したくない。
できない人間だと思われたくない。

そんな気持ちが、「聞く」というシンプルな行為を、
ものすごく重たく、難しいものに変えてしまった。

でも——本当は、聞かないことの方が危険だし、
知ったふりのまま進むことの方が、ずっと不安で、無責任なのです。

「聞く」ことへの再挑戦

ある日、思い切って「それってどういう意味ですか?」と尋ねたことがありました。

勇気を振り絞って言ったその一言に、
相手は驚くでもなく、すぐに丁寧に答えてくれました。

「よく聞いてくれたね。実は最初、みんなよくわかってないんだよ」

……拍子抜けしました。
そして、同時に少し安心しました。
「聞いていいんだ」と、肩の力がふっと抜けた瞬間でした。

それ以来、わからないことはできるだけ素直に尋ねるようにしています。
今はスマホでなんでも調べられる時代ですが、
“人に聞く”という行為には、検索にはない温度とつながりがあると感じています。

聞ける大人になろう

今の私が、息子からの「なんで?」にできる限り答えようとするのは、
自分がかつてもらっていた優しさを思い出すからです。

「知らないことを恥じなくていい」
「聞いてもいい」
そんなメッセージを、息子に届けたい。
同時に、それは自分自身に向けた言葉でもあります。

大人になると、「知ってて当たり前」というプレッシャーにさらされ続けます。
でも、本当にかっこいいのは、知ったふりをすることではなく、
素直に「教えてください」と言えることではないでしょうか。

知らないことを認めることは、勇気であり、成長への第一歩。
聞くことは、過去の自分と未来の誰かをつなぐ、優しさでもあります。

最後に、そっと問いかけます。

——あなたは最近、誰かに「それ、どういう意味ですか?」と聞けましたか?

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